職業別:離婚問題の典型的特徴

・大企業の会社員、公務員

大企業の会社員や公務員は、安定した給与収入があります。また、大企業の会社員や公務員といった安定した職業は、そう簡単に同等の転職先はみつかりません。そのため、大企業の会社員や公務員は、婚姻費用や養育費の支払いが高額になる傾向があります。

給与の差し押さえを受けても転職して執行逃れをすることは難しいでしょう。

また、大企業の会社員や公務員は、自身の預貯金以外にも財形貯蓄があったり、退職金の積み立てがあったりと、財産分与で気をつけないとならない点が多々あります。

・医師

医師の場合、勤務医と開業医とで注意するポイントが大きく異なってきます。

勤務医の場合、大企業の会社員や公務員と同じく安定した(そしてそれ以上に高額な)給与収入があります。なお、勤務医は転勤が多いのですが、昨今では名前をネットで検索するだけで勤務先病院が把握できることが多いでしょう。そのため、給与の差押えは容易です。

開業医の場合、勤務医以上に収入が大きくなり、養育費や婚姻費用の金額が大きくなります。なお、開業医の財産分与では、財産が多額に上る場合、単純に50対50で按分するのではなく、医師個人の才覚によって得た部分が大きいとして、医師側の取得割合が多くなることが勤務医以上に多くなります。
また、配偶者が専従者として勤務している場合、開業医の収入をどう扱うか、離婚紛争をしている最中も働き続けたり給与をもらいつづけたりできるのかといった問題が出てきます。

・会社経営者

会社経営者は、上場企業の役員などの特殊なケースを除いては、自身の役員報酬をどれだけ取って、会社に利益をどれだけ残すのか、自由に決められる人が多いです。この場合、養育費や婚姻費用を算定するにあたっては、役員報酬のみをベースにし、会社に残る利益は原則として考慮しません。
ただし、離婚紛争が生じてから、会社の業績が悪化したわけでもないのに急に役員報酬を減額した場合、養育費や婚姻費用の減額を目的としていると裁判所に看做されてしまう可能性があります。

財産分与では、会社の財産(会社名義の預貯金や不動産等)そのものは夫婦共有財産にはなりません。しかし、会社の株式が夫婦共有財産と考えられます。この場合、婚姻中に創業したのか、そうでないのか(婚姻前から創業していたとか、二代目・三代目であるとか)によって大きく変わってきます。婚姻中に創業した場合、会社の株式は全て夫婦共有財産として考えられます。
その上で、経営者個人の才覚によって得たものが大きいときには、分与割合を調整していくことになります。一方、婚姻前から創業していたとか、二代目・三代目である場合は、会社の資産価値が婚姻前と別居時でどれだけ変化したかが問題になります。

・専門職、自営業

専門職や自営業は、実際には多額の収入を得ていても、サラリーマンであったら小遣いから出さないとならないような支出を経費で落とすことで、税務上の収入を低く出すことができます。もっとも、家庭裁判所の算定基準では、それを踏まえて給与所得者と自営業者は別基準で養育費や婚姻費用を出すことになっています。

逆に、あまり経費を使わずに所得を高く出している専門職や自営業者は、養育費や婚姻費用の金額が相当高額になります。 また、専門職や自営業者の加入している保険は、所得控除の対象になって税務上の収入を低くするけれども、養育費・婚姻費用の算定にあたっては所得から控除しないという扱いにされるものがあります。注意が必要です。

・主婦

主婦は基本的に収入がないので、婚姻費用が高額になりますし、養育費と婚姻費用との差額も大きくなります。そのため、不本意な離婚を請求された場合には婚姻費用をなるべく多く回収しようという動きになります。逆に、主婦を相手に離婚を求めるとなると、相手方は経済的事情から離婚を拒否してくる可能性が高いです。

その一方で、養育費や婚姻費用を定めるにあたって、全くの無収入としては扱われず、パート等で勤務すれば数十万円~百万円程度の年収はあるものと扱われることが多いです。

・無職、その他不安定な職業

無職であったり不安定な職業に就いていたりする相手からは、養育費や婚姻費用の回収は難しいです。また、そもそも相手方の収入がどれくらいであるかを明らかにすることからして困難ということも珍しくありません。
このような場合、相手方から金銭を回収することに精力を注ぐよりは、相手方に頼らない生活を模索したほうがよいでしょう。